ほほえんでみせる
「やれやれ、また雨だ!」と言ったって何の役に立つというのだろう。そんなことは雨にも雲にも風にも何の影響も与えない。どうせなら「やあ、ちょうどいいお湿りだ!」となぜ言わないのか。それで気分もよくなるし、身体全体がしゃきっとして、実際にあたたっまってくる。歓びのちょっとしたしぐさの効果とはそういうものである。
人の場合も雨と同じこと。そんな簡単なことではないというだろうが、簡単かんたん、雨よりずっと簡単である。ほほえんでも雨には何の効き目もないが、人に対してはかなりの効果があるのだから。
ほほえんでみせるだけで、相手の悲しみや退屈は、もう軽くなっているのだ。
アラン「幸福論」